初めての宅建士資格試験重要過去問

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宅建士試験過去問 権利関係 占有 1-36 平成14年

売主A、買主B間の建物売買契約(所有権移転登記は行っていない)が解除され、建物所有者AがB居住の建物をCに売却して所有権移転登記をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1、AがBに対して、建物をCのために占有することを指示し、Cがそれを承諾しただけでは、AがCに建物を引き渡したことにならない。
2、Bが建物占有中に、地震によって、玄関のドアが大破したので修繕し、その費用を負担した場合でも、BはCに対してその負担額の償還を請求することはできない。
3、Bは、占有中の建物の一部をDに使用させ、賃料を受領した場合、その受領額をCに償還しなければならない。
4、Cが暴力によってBから建物の占有を奪った場合、BはCに占有回収の訴えを提起できるが、CはBに対抗できる所有権があるので、占有回収の訴えについては敗訴することはない。



胡桃「この問題は何について問う問題か分かるわね」
建太郎「占有権に関する出題だろ。仮に正当な所有権を有していない人でも、その物を占有しているからには、一定の権利を認めようという趣旨の制度だよな」
胡桃「そうね。そして、無権限でも占有を続けた結果、行きつく先はどういう状態か分かるわね?」
建太郎「あっ。時効取得だったね。占有開始時に悪意でも二十年間所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有すれば、所有権を原始取得すると」

(所有権の取得時効)
第百六十二条  二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2  十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

胡桃「そうよ。最終的には、時効取得につながるわけね。だから、占有権者にも一定の権利が認められている。そのことを踏まえたうえで、1から見ていくわよ」


建太郎「1は、代理占有の状態にあることを意味しているんだよね。つまり、BがAに代理して占有していると」

(代理占有)
第百八十一条  占有権は、代理人によって取得することができる。

建太郎「そして、代理占有の状態にある時は、指図による占有移転ができる」

(指図による占有移転)
第百八十四条  代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

建太郎「ここで留意すべきなのは、本人が命令を出すのは代理人、承諾するのは第三者であるということだね。代理人が分かりました。これからは第三者のために占有しますと承諾するわけではない。代理人がなんと言おうとも一切、お構いなしだということだね」
胡桃「そうよ。そのことが分かっていれば、条文そのままの出題だということが分かるわね。次、2はどうかしら?」
建太郎「占有者が必要費を支出した場合は、当然、所有者に償還できるはずだよな。民法にもこうあるよ」

(占有者による費用の償還請求)
第百九十六条  占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2  占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

胡桃「そうね。占有者と言えども、本来の権利者に対して、必要費の償還ができる。但し、果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。なぜだか分かるわね?」
建太郎「果実を取得していた――賃料を得ていたということは、大家さん同然にふるまっていたということだよな。必要費を負担するのは大家さんなわけだから、自分でどうにかしなさいよということだよな」
胡桃「そうね。3はどうかしら?」
建太郎「Bは無断転貸していたということだよな。だから、賃料は本来の所有者Cに返還すべきということかな?」
胡桃「これは、占有者の果実収得権限に関する問題なのよ」

(善意の占有者による果実の取得等)
第百八十九条  善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2  善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。

(悪意の占有者による果実の返還等)
第百九十条  悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2  前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。

胡桃「この場合、善意、悪意は、自分に所有権があるかどうかについての善意・悪意だということは分かるわね」
建太郎「ああ、分かるよ」
胡桃「条文にある通り、善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得することができるのよ。それに対して、悪意の占有者は、『果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。』とされているのよ。この問題は、この条文の知識を問う問題なのよ」
建太郎「まあ、当たり前の規定だよな」
胡桃「次、4はどうかしら?」
建太郎「これは、現在の民事法では自力救済は原則として認められていない。と知っていれば、常識で、間違いだと判断できるよね」
胡桃「そうね。それだけで正誤は判断できると思うけど、条文があるからチェックしておくわよ。まず、占有者にも占有回収の訴えを提起することができるということね」

(占有回収の訴え)
第二百条  占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2  占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

胡桃「そして、占有回収の訴えが為された場合は、裁判所は、占有者の訴えに耳を傾けなければならないとされているわ。たとえ、訴えの相手が所有者であっても、所有者なんだから、占有者から奪ってもお咎めなしとすることはできないのよ」

(本権の訴えとの関係)
第二百二条  占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
2  占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

建太郎「『占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。』ということだね」
胡桃「なぜだか、分かるわね?」
建太郎「もしも、所有者なら占有者から奪うのはOKとしてしまうと、自力救済を追認したも同然になってしまうからだよな」
胡桃「そうよ。というわけで、答えはどれか分かるわね?」
建太郎「3だね」



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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3