初めての宅建士資格試験重要過去問

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宅建士試験過去問 権利関係 担保物権 1-42 平成15年

Aは、B所有の建物に抵当権を設定し、その旨の登記をした。Bは、その抵当権設定登記後に、この建物をCに賃貸した。Cは、この契約時に、賃料の6か月分相当額の300万円の敷金を預託した。この場合、民法の規定及び、判例によれば、次の記述のうち、正しいものはどれか。

1、BがBのCに対する将来にわたる賃料債権を第三者に譲渡し、対抗要件を備えた後は、Cが当該第三者に弁済する前であっても、Aは、物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。
2、Bの一般債権者であるDがBのCに対する賃料債権を差し押さえ、その命令がCに送達された後は、Cが弁済する前であっても、Aは、物上代位権を行使して、当該賃料を差し押さえることはできない。
3、Aが物上代位権を行使して、BのCに対する賃料債権を差し押さえた後は、Cは、Aの抵当権設定登記前からBに対して有している弁済期の到来している貸付金債権と当該賃料とを相殺することはできない。
4、Aが物上代位権を行使して、BのCに対する賃料債権を差し押さえた後、賃貸借契約が終了し、建物を明け渡した場合、Aは、当該賃料債権について、敷金が充当される限度において、物上代位権を行使することはできない。


建太郎「これは難しい。そもそも、何を問いたい問題なのかさっぱり分からない」
胡桃「確かにレベルの高い問題だわ。でも抵当権と賃貸借契約の組み合わせで出題された場合は、何を問いたいのかすぐに思い浮かべられるようにしておくべきよ」
建太郎「抵当権と賃貸借契約の組み合わせと言えば……」



(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
第三百九十五条  抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
一  競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二  強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
2  前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

建太郎「真っ先に思い浮かべるのはこの条文だな」
胡桃「確かにそれも重要だわね。もう一つ、押さえておきたいのは、物上代位性の問題ね。抵当権者は、抵当不動産の賃料に対しても物上代位できるのは分かっているわね?」

(物上代位)
第三百四条  先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2  債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

留置権等の規定の準用)
第三百七十二条  第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。

建太郎「ああ。知っているよ。火災保険の払い渡し請求権だけでじゃないんだよな」
胡桃「そして、物上代位権を行使するには、『その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない』とされているわ。どうしてか分かるかしら?」
建太郎「他の財産に混じってしまうと、優先弁済を受けられる範囲が不明確になってしまうからじゃなかった?」
胡桃「そうね。それから、物上代位はそもそも、おまけの権利だから、権利行使したければ、抵当権者が差し押さえをしなさいよという考えもできるわね」
建太郎「おまけの権利?まあ確かにそうとも言えるな。抵当権者は、抵当権の実行によって優先弁済を受けるのが王道だもんな。物上代位は邪道と言うべきか」
胡桃「ただ、第三債務者――差し押さえられた債権の債務者の立場からすれば、つまり、この設問の場合は、Cの立場からすれば、差し押さえによって、誰に弁済すればいいのかが明確になるというメリットがあるわね」
建太郎「確かにそうだな。本来はBに支払うべきだろうけど、Aが差し押さえをしたならば、Aに支払うことで債務不履行に陥る事態から免れるわけだね」
胡桃「抵当権と物上代位権の問題を解く時のポイントは、第三債務者の立場に立って考えることよ。第三債務者を害することにならないかどうかを考えれば、自ずと答えは出るわ。まず、1から見るわよ」
建太郎「ええっと……。賃料債権が第三者に譲渡された後でも、第三債務者Cが弁済する前であれば、抵当権者は、払渡し又は引渡しの前に差押えをして、物上代位権を行使できるのか?」
胡桃「できるわ。第三債務者であるCにとっては、誰に支払うべきか明確になるから問題ないでしょ。判例も、物上代位の目的債権が譲渡されて、第三者に対する対抗要件が備わったとしても、自ら、目的債権を差し押さえて、物上代位権を行使することができるとしているわ。次、2はどうかしら?」
建太郎「これも……、第三債務者Cが弁済していない以上、抵当権者は差し押さえをすれば、物上代位することができると?」
胡桃「そうよ。一般債権の差し押さえと抵当権者の物上代位による差し押さえが競合する時は、差し押さえ命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の前後によって、優劣を決するべきだとしているわ。というわけで、設問の場合は、Aの物上代位による差し押さえが優先するわけね。次、3はどうかしら?」
建太郎「これは相殺の問題だよね」

(支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百十一条  支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。

建太郎「支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。だけど、抵当権設定前から有している債権との相殺は認められるよな」
胡桃「そうね。判例も、抵当権者が物上代位権を行使して抵当不動産の賃料債権を差し押さえた後は、賃借人は抵当権設定登記後に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできないとしているけど、抵当権設定前から有している債権との相殺が認められるのは当然ね。次、4はどうかしら?」
建太郎「賃貸借が終了して、建物が明け渡されると、未払いの賃料債権は敷金から充当されるんだよね。充当された分だけ、賃料債権の額が少なくなるのは当然だよね」
胡桃「そうね。判例も、敷金が授受された賃貸借契約にかかる賃料債権につき、抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合でも、当該賃貸借が終了し、目的物が明け渡されたときは、賃料債権は敷金の充当により、その限度において消滅するとしている。抵当権者の物上代位権はその限りにおいて、行使することはできなくなるとしているわ。というわけで答えはどれかしら?」
建太郎「4だね」


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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限1