初めての宅建士資格試験重要過去問

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宅建士試験過去問 権利関係 取得時効 1-48 平成10年

所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。

1、Bの父が15年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有し、Bが相続によりその占有を承継した場合でも、B自身が5年間占有しただけでは、Bは時効によって、甲土地の所有権を取得することができない。
2、Bが2年間自己占有し、引き続き18年間Cに賃貸していた場合は、Bに所有の意思があっても、Bは、時効によって、甲土地の所有権を取得することができない。
3、DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効完成前であると後であるとを問わず、Bは登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。
4、取得時効による所有権の取得は、原始取得であるが、甲土地が農地である場合は、Bは、農地法の許可を受けた時に限り、時効によって甲土地の所有権を取得することができる。


胡桃「これも簡単な問題だわね」
建太郎「そうか?難しい選択肢があるけど……」
胡桃「それでも、基本的なことが理解できていれば、消去法で正答を見つけられるはずよ」



胡桃「取得時効に関しては、先の問題で見た通りだけど、もう一度、条文を確認しておくわよ」

(所有権の取得時効)
第百六十二条  二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2  十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

建太郎「所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有していれば、二十年間で所有権を時効取得する。占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは十年間で所有権を時効取得する。というわげだね」
胡桃「そうね。まず、1から見ていくわよ」
建太郎「これは時効の基本的な問題だよね。占有を承継した人は、自己の占有だけでなくて、前の占有者の占有も合わせて主張できる」

(占有の承継)
第百八十七条  占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2  前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

建太郎「1のケースでは、Bの父の占有と合せて二十年間占有したことになるから、Bの父が占有開始の時に、悪意有過失だったとしても、Bは甲土地を時効取得することができることになる」
胡桃「そうね。じゃあ2はどうかしら?」
建太郎「所有権を時効取得するためには、占有しなければならないわけだけど、その占有は、自分が直接占有する場合に限られない。間接占有でもいいんだよね」

(代理占有)
第百八十一条  占有権は、代理人によって取得することができる。

建太郎「2のケースでは、Cが賃借している間も間接占有が継続していると言えるから、自己占有と合せて、二十年間占有していたことになり、取得時効が完成するね」
胡桃「そうね。3はどうかしら?」
建太郎「これは対抗要件の問題だよね。時効完成前の所有者に対しては、時効取得者は、登記なくして時効取得を対抗できることはもちろんだけど、時効完成前に所有者から取得した第三者に対しても対抗できるんだよな」
胡桃「どうしてかしら?」
建太郎「そう考えなければ、時効取得のしようがないじゃん。それに、時効完成前に所有者から取得した第三者と時効取得者は当事者の関係に立つと言える。つまり、売買契約で言うところの売主と買主のような関係になるんだよな」
胡桃「そうね。じゃあ、3のケースで、DがBの取得時効完成後にAから甲土地を買い受けた場合はどうなるのかしら?」
建太郎「その場合は、二重売買に等しい関係になる。時効完成によってAからBに所有権が移転する一方で、AからDに売却されていると見ることができるわけだ。だから、先に登記を備えた方が優先するわけだよね」
胡桃「それが分かっていれば、3の正誤は判断できるわね。じゃあ4はどうかしら?」
建太郎「これがよく分からない。農地法に基づく許可って何?」
胡桃「農地法に基づく許可が何か分からないの?法令上の制限で勉強するのよ」
建太郎「まだそこまで勉強していないし……」
胡桃「だったら、法令上の制限を勉強したらもう一度、この選択肢を見直しなさいよ。とりあえず、農地の売買をするには、農業委員会の許可が必要になると覚えておいて。条文は次の通りよ」

(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第三条  農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。
(以下、長すぎるので略)

胡桃「で、時効取得する場合は、この農業委員会の許可が必要なのかどうかという問題よ」
建太郎「許可がなければ取得できないとなれば、時効取得の制度が意味なくなるんじゃない?」
胡桃「そうね。実務でも、時効取得した場合は、農業委員会の許可は不要としているわ。というわけで、答えはどれかしら?」
建太郎「3だね」



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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限1