初めての宅建士資格試験重要過去問

解けなかったら合格できない重要過去問をピックアップしていきます

宅建士試験過去問 権利関係 相続 1-51 平成16年

自己所有の建物に妻Bと同居していたAが遺言を残さないまま、死亡した。Aには先妻との間に子C、Dがいる。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。

1、Aの死後、遺産分割前にBがAの遺産である建物に引き続き居住している場合、C及びDは、Bに対して建物の明け渡しを請求することができる。
2、Aの死後、遺産分割前にBがAの遺産である建物に引き続き居住している場合、C及びDは、それぞれBに対して、建物の賃料相当額の四分の一ずつの支払いを請求することができる。
3、Aの死亡時点で、BがAの子Eを解任していた場合、Eは相続人とみなされ、法定相続分は、Bが二分の一、CDEは、各六分の一ずつになる。
4、Cの子FがAの遺言書を偽造した場合には、CはAを相続することができない。


建太郎「相続の分野って、条文レベルの出題じゃなかったのか?やたらと難しくないか?」
胡桃「確かに、宅建のテキストには書かれていないような選択肢もあるわね。でも、明らかに宅建レベルを超えていると分かる選択肢が答えというケースは少ないのよ。難しい選択肢が出てきたら、とりあえず除外して、分かる選択肢の中に答えがないかどうか検討するべきよ」
建太郎「それには、どこまでが宅建レベルかの見極めが必要だね」
胡桃「宅建のテキストをしっかりと読み込んでいれば、見極めることは難しくないわよ。基本的に宅建は条文レベルの出題。時に判例も出るけど、どのテキストにも載っている基本的な判例が問われるだけよ」
建太郎「うーん。そうかな」
胡桃「というわけで1から見ていくわよ」


建太郎「いきなりつまずくんだよね。どう考えればいいのかさっぱり分からない。とりあえず、常識からして、間違いだろうなというのは分かるけどさあ」
胡桃「民法の問題は民法の条文と判例に則って解くものよ。一般常識で判断していたら、民法の問題ではなくなるわ。まず、相続人が複数いる場合は、相続財産の権利関係はどうなるかしら?」
建太郎「もちろん共有になるんだろ?」

(共同相続の効力)
第八百九十八条  相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

第八百九十九条  各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

胡桃「そう、共有よ。共有の場合、建物を使用できるのは誰かしら?」
建太郎「もちろん、共有者全員だろ。持ち分に応じて使用できるんだっけ?」

(共有物の使用)
第二百四十九条  各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

胡桃「持ち分に応じて使用するの意味を勘違いしないでね。持ち分に応じて部屋割りをしなければならないという意味ではないのよ。共有者一人一人が、共有物の全部に対して権利行使ができるということよ。だから、共有者の一人だけが独占的に住んでいる状態でも全く問題ないということよ」
建太郎「ということは、設問のBさんは一人で住んでいても問題ないと?」
胡桃「もちろんよ。CやDに明け渡しを求められても応じる必要はないのよ」
建太郎「でも、一人の人が独占的に住んでいるならば、他の共有者に持ち分に応じた賃料相当額を支払うべきじゃないの?」
胡桃「一般的にはそういうことになるわね。そうすべきじゃないかと問うのが選択肢2だわ。どう考えるべきかしら?」
建太郎「うーん。常識的に考えて、遺産分割前は、従前の状態を維持するのが筋なんじゃない?遺産分割が終わっていないのに、法定相続分の賃料を支払えと要求するのは、非常識なんじゃないかな?」
胡桃「分からなければ、常識で判断するというのは最終手段ね。とりあえず、これは判例なのよ」
建太郎「うん?」
胡桃「設問みたいに、共同相続人の一人が被相続人と同居していた場合は、遺産分割が確定するまでは、引き続き、同居の共同相続人が無償で住み続けることができるとしているのよ。その法律関係は、被相続人の地位を承継した他の相続人が貸主となり、同居の相続人を借主とする使用貸借契約が存続するという形になるとされているわ。使用貸借の意味はOKよね?」
建太郎「無償で使用させることができる貸借関係だよな。一般の賃貸借は賃料の支払いが要件となっているけど、使用貸借は無償の契約になる」

(賃貸借)
第六百一条  賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(使用貸借)
第五百九十三条  使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

建太郎「使用貸借契約が存在するものという扱いになるならば、遺産分割が終わるまでは、Bさんは無償で住み続けられるわけだ」
胡桃「そうよ。設問みたいな事例は、相続に際して問題になることが多いの。子供が親のことを追い出して、家を売却して遺産分けしてしまうと、親の行き場所が無くなってしまうでしょ。住み慣れた家を離れて、肩身の狭い思いをしながら子供の家を転々と渡り歩かなければならなかったりするのよ」
建太郎「困った話だよな」
胡桃「そこで、配偶者を相続に際して優遇して、家を売却しなくても済むようにしようという方向で民法の法改正が検討されているわ。改正が行われたら、この辺りの事が問われるはずだから、チェックしておいてね」
建太郎「OK」
胡桃「次、3はどうかしら?」
建太郎「これは基本だよね。胎児は相続に関しては生まれたものとみなす」

(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条  胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2  前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

建太郎「だから、子供が三人になるわけで、子供の法定相続分は、それぞれ六分の一ずつになる」

法定相続分
第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

胡桃「そうね。次、4はどうかしら?」
建太郎「これも基本だね。遺言書の偽造は相続人の欠格事由に該当する」

(相続人の欠格事由)
第八百九十一条  次に掲げる者は、相続人となることができない。
一  故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二  被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三  詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四  詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五  相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

建太郎「ただ、選択肢4では、偽造しているのはCの子F。Fは今回の相続で相続人にはならないから、欠格事由もなにもない」
胡桃「そうね。たとえ、子供が偽造したとしても親が欠格事由に該当するわけではないということね。もちろん、親子で共謀していた場合は、欠格事由に該当するわけだけど、選択肢を読む限りではそのような記述は読み取れないわね」
建太郎「そうだな」
胡桃「というわけで答えは?」
建太郎「3だね」



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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限1