初めての宅建士資格試験重要過去問

解けなかったら合格できない重要過去問をピックアップしていきます

宅建士試験過去問 権利関係 解除 2-24 平成21年 / 宅建はライトノベル小説で勉強しよう

売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の三分の二の支払いと引き換えに、所有権移転登記手続きと引き渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。

1、Aの解除前に、BがCに甲土地を売却し、BからCに対する所有権移転登記が為されている時は、BのAに対する代金債務につき、不履行があったことをCが知っていた場合においても、Aは解除に基づく甲土地の所有権をCに対して主張できない。
2、Bは、甲土地を現状有姿の状態でAに返還し、かつ、移転登記を抹消すれば、引き渡しを受けていた間に、甲土地を貸駐車場として収益を上げていた時でも、Aに対してその利益を償還すべき義務はない。
3、Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。
4、Aは、Bが契約解除後、遅滞なく原状回復義務を履行すれば、契約締結後、原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合でも、Bに対して、損害賠償を請求することはできない。



胡桃「これは条文レベルの基本的な問題だわね」
建太郎「えっ。そうなのか?よく分からない選択肢もあるけど」
胡桃「知らない選択肢があっても、基本を押さえていれば、正解がどれかは分かるはずよ」


胡桃「まず、売主Aが契約解除を行うとどうなるか分かるわね?」
建太郎「売主Aも買主Bも、原状回復義務を負うんだよな。つまり、売主Aは代金を返還しなければならないし、買主Bは、甲土地を明け渡して、登記も抹消しなければならない」
胡桃「条文を確認しておくわよ」

(解除の効果)
第五百四十五条  当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2  前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3  解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

胡桃「それをふまえた上で、1はどう考えるべきかしら?」
建太郎「契約解除前の第三者の問題だよな。ただし書きにある通り、第三者の権利を害することはできないとされている。つまり、契約解除前に甲土地を買ったCに対しては、Aは契約解除を主張することができない」
胡桃「Cは善意悪意を問わずに保護されるのかしら?」
建太郎「善意悪意は問わないけど、権利保護要件としての登記を備えていなければならないんだよな」
胡桃「それじゃあ、契約解除後に、BがCに甲土地を売却した場合はどうなるかしら?」
建太郎「契約解除後は、BからAへの契約解除による原状回復とBからCへの売買による所有権移転が並立する形になるね。つまり、Bを起点にして二重売買が為されたのと同様の関係になるから、対抗問題になる」

(不動産に関する物権の変動の対抗要件
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

建太郎「だから、対抗要件としての登記を先に備えた方が、勝つわけだね」
胡桃「その通りよ。次、2はどうかしら?」
建太郎「これがよく分からないんだよな。お互いに原状回復義務を負うのは分かるけど、収益まで返還しないといけないのか?」
胡桃「第五百四十五条の2項を読んでみてくれる?」
建太郎「うん?『前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。』ということは、売主Aは、受け取った売買代金に利息をつけて返還しなければならないということか?」
胡桃「そうよ。一方、買主Bは、何を返還するのかしら?」
建太郎「甲土地を返還する……だけでは、不公平なのか?」
胡桃「不公平だと分かるでしょ。甲土地で収益を上げていたならば、収益も返還すべきだということになると思わない?」
建太郎「そうだな。そうしないと均衡がとれないことになる」
胡桃「判例も、返還すべきものは、受領物そのものだけでなく、解除されるまでの間、使用収益した利益にも及ぶとしているわ。覚えておいてね」
建太郎「OK」
胡桃「3はどうかしら?」
建太郎「解除による原状回復義務は、同時履行の関係にあるんだよな」

(契約の解除と同時履行)
第五百四十六条  第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。

※(同時履行の抗弁)
第五百三十三条  双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

建太郎「たとえ、自らの債務不履行が理由で解除されたとしても、BはAに対して同時履行の抗弁を主張できる」
胡桃「そうね。4はどうかしら?」
建太郎「契約を解除しても損害を被っていれば、損害賠償請求ができるんじゃないの?」
胡桃「そうね。第五百四十五条3項にある通りだわ。というわけで答えはどれかしら?」
建太郎「1だね」



ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキストとは?

 宅建士(宅地建物取引士)資格試験の基本テキストです。

 一般的な資格スクールのテキストとは違い、全文が小説形式で記されています。ライトノベル小説を読む感覚で、宅建士試験の勉強ができてしまうという画期的なテキストです。

 入門書ではありません。宅建士試験で問われる項目はすべて網羅しており、一部は、司法書士試験、不動産鑑定士試験レベルの内容も含んでいます。シリーズを全巻読破すれば、宅建士試験に楽々合格できるレベルの知識が身に付きます。
 初めて宅建の勉強をする方はもちろんのこと、一通り勉強した中上級者の方が、試験内容をサラッと再確認するのにも役立ちます。

 通勤時間や待機時間に、資格スクールのテキストをめくっても、集中できなくて、内容が頭に入ってこない。という悩みを抱えている方も多いと思います。
 でも、ライトノベル小説ならすんなりと読めるのでは?

 既にお持ちの資格スクールのテキストや過去問と併用してお読みいただくことで、より一層、内容を理解することができますよ。

ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキストシリーズは下記で公開しています

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 宅建業法1