初めての宅建士資格試験重要過去問

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宅建士試験過去問 権利関係 相殺 2-26 平成23年 / 宅建はライトノベル小説で勉強しよう

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し、賃料債権を有している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。

1、Aの債権者CがAのBに対する賃料債権を差押えた場合、Bは、その差押え前に取得していたAに対する債権と差押えに係る賃料債務とをその弁済期の前後にかかわらず、相殺適状になった段階で相殺し、Cに対抗することができる。
2、甲建物の抵当権者Dが物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、Bは、Dの抵当権設定登記の後に取得したAに対する債権と差押えに係る賃料債務とを相殺適状になった段階で相殺し、Dに対抗できる。
3、甲建物の抵当権者Eが物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、その後に賃貸借契約が終了し、目的物が明渡されたとしても、Bは、差押えに係る賃料債務につき、敷金の充当による当然消滅をEに対抗することはできない。
4、AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知した時は、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており、相殺適状になっていたとしても、Bは、通知後はその債権と譲渡に係る賃料債務とを相殺することはできない。


建太郎「むむっ……。この問題は難しくないか?」
胡桃「そうかしら?相殺に関する基本的な判例の知識を問う問題よ。確実に得点したい問題だわ。まず、相殺とは何かという点から見ていくわよ」


(相殺の要件等)
第五百五条  二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2  前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

胡桃「相殺するためには、どういう状況になければならないんだっけ?」
建太郎「相殺適状になければならないんだよな」
胡桃「相殺適状というためには、四つの要件を満たさなければならなかったわね。読み取れるかしら?」
建太郎「ええっと。1、二人が互いに債務を負担していること。2、双方の債権が同種の目的を有すること。3、双方の債務が弁済期にあること。4、債務の性質が相殺を許すものであること。この四つだな」
胡桃「それをふまえたうえで、1から見ていくわよ。どう考えるべきかしら?」
建太郎「1は、支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止に関する問題だよな」

(支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百十一条  支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。

建太郎「1のような事例の場合、債務者Bは、Aの債権者Cが差押えた後で、Aに対して取得した債権をもって、相殺することができないという意味だよな。だけど、Cが差し押さえる前に、BがAに対して有していた債権とCが差押えた賃料債権とを相殺することは認められている」
胡桃「その通りね。Bとしては、賃料債権と相殺することを期待していたわけだからよね。問題は、弁済期の前後を問わないのかということよ。例えば、第三債務者の自働債権の弁済期が受働債権の弁済期よりも先に到来する場合は、第三債務者は差押え債権者に対して対抗できるにしても、自動債権の弁済期が受働債権の弁済期よりも後に到来する場合でも、相殺を主張していいのかということよ。どう考えるべきかしら?」
建太郎「弁済期の前後なんて問題にしなくていいんじゃない?どちらの弁済期が早かろうと、Bとしては、相殺することを期待していたわけだから、その期待を保護すべきじゃないかな」
胡桃「そうね。判例も、Bの期待――相殺の担保的機能を重視して、弁済期の前後を問わず、相殺することができるとしているわ。有名な判例だから、押さえておいてね」
建太郎「OK」
胡桃「次に、2はどうかしら?」
建太郎「債権が差し押さえられた場合、第三債務者であるBは、自分の債権者であるAに対して弁済することはできないんだよな」

(支払の差止めを受けた第三債務者の弁済)
第四百八十一条  支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
2  前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。

建太郎「もちろん、弁済することだけでなく、差押え後に取得した債権を以て、差押債権者に対抗することはできないとされている。第五百十一条の条文通りだな」
胡桃「そうね。3はどうかしら?」
建太郎「これがよく分からないんだよな。賃貸借契約が終了したならば、当然、賃料の残りは、敷金から充当することで、消滅させることができるんじゃない?抵当権者が物上代位権を行使したとしてもさ」
胡桃「これは判例だから、そのまま覚えるしかないわ。賃貸借契約の目的物が返還される際に残存している賃料債権は、敷金の充当により、その限度で当然に消滅するわ。だから、賃料債権について、物上代位による差し押さえが為された場合でも、その消滅を抵当権者に主張することができるとされているわ」
建太郎「とりあえず、そのまま覚えるしかないわけだな」
胡桃「次、4はどうかしら?」
建太郎「債権譲渡の通知を受けた場合の債務者の抗弁権について問う問題だよな」

(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)
第四百六十八条  債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
2  譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

建太郎「『譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。』とされている。相殺適状にあることも、譲受人に対抗することができるんだよな」
胡桃「その通りよ。というわけで答えは?」
建太郎「1だね」



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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 宅建業法1