法定相続人に相続させたくない場合 / 行政書士だけでは食えない今の時代を生き抜くためのヒントは孫子の兵法にあり
特定の法定相続人に遺産を相続させたくないと考えることもあると思います。
例えば、
自分の面倒を見てくれない。あるいは、自分に対して虐待をする子供に財産を相続させたくない。
離婚協議中である配偶者に対して財産を相続させたくない。
といったような場合です。
このように考えていたとしても、何らの処置も取らずにいると、相続時には、法定相続人としてあなたの遺産を相続してしまうことになります。
それを防ぐための手段は二つあります。
一つは、遺言書で遺産分割方法を指定して、相続させたくない人を除いておくこと。
ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分があることに留意する必要があります。
※参考条文民法
(遺留分の帰属及びその割合)
第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一
そのため、特定の子供や配偶者を除いて、相続分の指定をしたとしても、思い通りには行きません。
あなたが亡くなった後、遺産をもらえなかった者が、遺留分減殺請求をしてくるでしょう。トラブルが大きくなることは容易に予想できます。
なお、相続人が兄弟姉妹しかいない場合は、遺言書だけで、兄弟姉妹を相続人から排除することができます。
兄弟姉妹は、遺留分減殺請求をすることができないので、遺言書で覗いておけば、文句を言うことができないのです。
あなたの思い通りに遺産の行方を決めることができます。
もう一つ方法は、相続人の廃除を行うことです。
相続人の廃除とは、特定の法定相続人が、遺産を受け継ぐにふさわしくない非道徳的な人間であるということを家庭裁判所に認定してもらう制度です 。
廃除が認められると、その人は、法定相続分を主張することも、遺留分を主張することもできなくなるのです。
ただし、相続人の廃除は、その人の人格を否定するような制度ですから、よっぽどのことがない限り、認められません。
民法でも、「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」とされており、これに該当するかどうかを家庭裁判所が慎重に判断することになります。
※参考条文民法
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
相続人の廃除を行う方法は二通りです。
一つは、あなたが生きているうちに、家庭裁判所に相続人の廃除を請求する方法です。
生きているうちに、手続きを進めようとすると、何かと都合が悪いとか、身に危険が及びかねない場合もあるでしょう。
そのような場合は、遺言書によって廃除する旨、書き記しておくこともできます。
※参考条文民法
(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
例えば、このように記載するわけです。
特定の相続人を廃除する場合の遺言書文例
乙山次郎(住所、生年月日)はこれを相続人から排除する。
乙山次郎は、常日頃よりギャンブルと酒におぼれている。遺言者のところに来て金銭を無心し暴力を振るうこともあった。また、遺言者の預貯金二千万円を無断で解約し浪費したこともあった。
このような行いからして、遺言者に対して重大な侮辱を加え、著しい非行があるものと考える。
ただ、遺言書によって廃除する場合は、遺言書が相続人によって発見されなければなりません。
自筆証書遺言の場合は、相続人が発見した後で、検認と言う手続きを経て、遺言書の内容が執行されることになります。
※参考条文民法
(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
当然、廃除の手続きも、検認の後で進められます。
もしも、廃除の手続きに進むまでの間に、廃除しようとしている推定相続人が、遺言書を手に取ったらどうでしょう?
自筆証書遺言の場合、検認を終えていない段階では、遺言書はこの世に存在しないも同然です。
推定相続人が、破棄してしまえば、せっかくの遺言書が役に立たなくなってしまうのです。
もちろん、遺言書を破棄した場合、破棄した人は、相続人欠格事由に該当することになります。
※参考条文民法
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
ただ、遺言書の存在を知っている人が、破棄した人一人だけだったとすれば、欠格事由も何もないわけです。
遺言書。とりわけ、自筆証書遺言によって、推定相続人を廃除することは、かなり難しいことであると考えたほうがいいです。
他の相続人にも、多大な負担をかけることになってしまいます。
どうしても、廃除したい者がいる場合は、遺言書ではなく、生前に手続きを行っておくのが確実です。
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