初めての宅建士資格試験重要過去問

解けなかったら合格できない重要過去問をピックアップしていきます

宅建士試験過去問 権利関係 占有 2-44 平成27年 / 宅建はライトノベル小説で勉強しよう

占有に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1、甲建物の所有者Aが甲建物の隣家に居住し、甲建物の裏口を常に監視して、第三者の侵入を制止していたとしても、甲建物に錠をかけてその鍵を所持しない限り、Aが甲建物を占有しているとは言えない。
2、乙土地の所有者の相続人Bが乙土地上の建物に居住しているCに対して、乙土地の明渡しを求めた場合、Cは、占有者が占有物について行使する権利は、適法であるとの推定規定を根拠として、明渡を拒否することができる。
3、丙土地の占有を代理しているDは、丙土地の占有が第三者に妨害された場合には、第三者に対して占有保持の訴えを提起することができる。
4、占有回収の訴えは、占有を侵害した者及びその特定承継人に対して当然に提起することができる。



建太郎「なんだこの問題は!鍵を所持していなければ、だめかどうかって、細かすぎるだろ!」
胡桃「確かに細かい選択肢もあるけど、条文レベルの問題よ」
建太郎「問題文は短いけど、訳の分からない選択肢もあるよ」
胡桃「だとしたら勉強不足だわ。もう一度テキストを読み直しなさいよね」


胡桃「まず、1の選択肢で問われていることは、Aが甲建物を占有していると言えるかどうかということね」
建太郎「Aが甲建物の所有者なんだろ?住んでいなくても、甲建物を管理しているなら、占有していると見ていいんじゃないの?そもそも、所有者という時点で、鍵をかけているかどうかなんてどうでもいいじゃん?」
胡桃「とりあえず、これは判例だから、覚えておいてね。家屋の所有者が家屋に錠をかけて、鍵を所持していなかったとしても、その家屋の隣地に居住して、常に出入り口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあれば、所有者は家屋を所持するものと言えるとしているわ」
建太郎「うーん。細かすぎるなあ……」
胡桃「2はどうかしら?」
建太郎「意味不明。これは何の問題なんだ?」
胡桃「民法の第百八十八条よ」

(占有物について行使する権利の適法の推定)
第百八十八条  占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

胡桃「Cがこの規定を援用することができるかどうかを問う問題なのよ」
建太郎「そもそも、Cは権限があって占有しているのかどうかはっきりしないじゃん。賃貸借契約を結んでいたのか?それとも、不法占拠なのか?」
胡桃「そう。そこがポイントなのよ。他人の不動産を占有している人は、適法な権限――正権原――があることを立証できなければならないのよ。つまり、Cには、正権原についての立証責任があるのね」
建太郎「うん?例えば、乙土地の所有者と賃貸借契約を結んでいたというようなことを立証しろということだよな?」
胡桃「だから、第百八十八条の推定規定を使って、言い逃れすることはできませんよ。というのが判例なのよ」
建太郎「つまり、Cは、第百八十八条を援用することができないと。賃貸借契約書などを示して立証しろというわけだな」
胡桃「そうよ。理解できたかしら?」
建太郎「うん。何となく分かった」
胡桃「3はどうかしら?」
建太郎「占有代理人でも、占有訴権があると考えるべきじゃないの?」
胡桃「そうね。占有訴権を行使できるのは、占有者本人だけではないわ」

(占有の訴え)
第百九十七条  占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。

建太郎「他人のために占有をする者も、同様とする。と、はっきり書かれているな」
胡桃「ちなみに、占有の訴えって三つあるけど、何と何と何か分かるわね?」
建太郎「ええっと……。占有保持の訴え、占有保全の訴え、占有回収の訴えか」

(占有保持の訴え)
第百九十八条  占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

(占有保全の訴え)
第百九十九条  占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

(占有回収の訴え)
第二百条  占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2  占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

胡桃「そうね。三つの訴えがどういう訴えなのか確認しておいてね。重要なのは、占有回収の訴えね。2項よ」
建太郎「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができないということか。つまり、占有を侵奪した者から、買い取った第三者に対しては、訴えを提起できないと?」
胡桃「そうよ。ちなみに、特定承継人というのは、買主だけでなくて、賃借人も含むとされているわ」
建太郎「うん。それから、買主や賃借人が侵奪の事実を知っていたときは、占有者はその人たちに対しても、占有回収の訴えを提起できるんだな」
胡桃「但書ね。この条文が理解できれば、選択肢4は簡単ね」
建太郎「なるほど。条文レベルなんだな」
胡桃「というわけで答えは?」
建太郎「3なんだな」



ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキストとは?

 宅建士(宅地建物取引士)資格試験の基本テキストです。

 一般的な資格スクールのテキストとは違い、全文が小説形式で記されています。ライトノベル小説を読む感覚で、宅建士試験の勉強ができてしまうという画期的なテキストです。

 入門書ではありません。宅建士試験で問われる項目はすべて網羅しており、一部は、司法書士試験、不動産鑑定士試験レベルの内容も含んでいます。シリーズを全巻読破すれば、宅建士試験に楽々合格できるレベルの知識が身に付きます。
 初めて宅建の勉強をする方はもちろんのこと、一通り勉強した中上級者の方が、試験内容をサラッと再確認するのにも役立ちます。

 通勤時間や待機時間に、資格スクールのテキストをめくっても、集中できなくて、内容が頭に入ってこない。という悩みを抱えている方も多いと思います。
 でも、ライトノベル小説ならすんなりと読めるのでは?

 既にお持ちの資格スクールのテキストや過去問と併用してお読みいただくことで、より一層、内容を理解することができますよ。

ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキストシリーズは下記で公開しています

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 宅建業法1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 宅建業法2