遺言書を作成できる人 / 行政書士だけでは食えない今の時代を生き抜くためのヒントは孫子の兵法にあり
・遺言能力 未成年者の遺言
遺言書は誰でも作成できるわけではありせん。遺言書を作成するためには遺言能力を有していなければなりません。
遺言能力とは、簡単に言えば、遺言書のことを理解し、自分が何をしようとしているのかを認識できているかどうかの能力です。
未成年者の場合でも十五歳に達したら、遺言をすることができるとされています。
通常、未成年者が法律行為を行うためには、法定代理人の同意を得なければならないとされています。
遺言書を書くことも重要な法律行為です。遺言書によって、重要な財産や多額の資産の帰属先が左右されるのですから。
本来は、未成年者が遺言をするためには法定代理人の同意が必要なはずですが、十五歳に達した者ならば、法定代理人の同意は必要ありませんし、一旦なされた遺言を法定代理人が取り消すこともできません。
遺言だけが例外扱いされているのは、遺言は遺言者の死亡の時からその効力を生ずるものだからです。
未成年者が亡くなった後に効力が生じるのであれば、未成年者を保護する必要性がなく、むしろ、本人の最終意志を尊重すべきだと考えられているのです。
十五歳未満の者は、法定代理人の同意があっても遺言をすることができませんし、法定代理人が代理するということもできません。
・認知症の方による遺言
遺言能力に関して問題になるのは、認知症の方による遺言です。
十五歳以上であれば認知症だろうと遺言することができるということになるわけですが、民法第九百六十三条には、遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。と定められています。
認知症の方の場合は、遺言書のことを理解し、自分が何をしようとしているのか認識できていないケースもあり、そのような状況で遺言をしても無効になります。
もちろん、認知症の方が全員、遺言能力を有していないというわけではなく、自分が何をしようとしているのかしっかりと認識して遺言する方もいます。
しかし、いざ相続となった時は、その遺言内容に不満を持つ相続人が、遺言能力の有無を巡って擾乱を引き起こすことが度々あります。
・成年被後見人による遺言
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。 とされています。
遺言も重要な法律行為ですから、成年被後見人の遺言は取り消すことができると考える方もいるかもしれませんが、やはり、遺言に関しては、例外扱いされています。
成年被後見人でも遺言をすることができます。
ただし、特別な手順を踏まなければならないとされています。
第九百七十三条により、成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。とされており、遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。 とされています。
※参考条文
(遺言能力)
第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
第九百六十二条 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。
※(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
※(成年被後見人の法律行為)
第九条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
※(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
2 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
※(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
(被後見人の遺言の制限)
第九百六十六条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
2 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用しない。
(成年被後見人の遺言)
第九百七十三条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
(証人及び立会人の欠格事由)
第九百七十四条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
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