宅建士試験過去問 権利関係 瑕疵担保 2-17 平成26年
Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引き渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1、Cは、売買契約締結の当時、本件建物に瑕疵があることを知っていた場合でも、瑕疵の存在を知ってから一年以内であれば、Aに対して、売買契約に基づく瑕疵担保責任を追及することができる。
2、Bが建物としての基本的な安全性に欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために、本件建物に基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合は、当該瑕疵によって損害を被ったCは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。
3、CがBに対して本件建物の瑕疵に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが瑕疵の存在に気づいてから、一年以内である。
4、本件建物に存在している瑕疵のために、請負契約を締結した目的を達成することができない場合、AはBとの契約を一方的に解除することができる。
建太郎「なんだこの問題は!瑕疵担保責任の問題かと思ったら、不法行為責任について問う選択肢も混じっているじゃないか」
胡桃「瑕疵担保責任を追及できる場合は、併せて、不法行為責任を追及できる場合も少なくないのよ。この二つが混在する問題があっても驚くことではないわ」
建太郎「しかも、瑕疵担保責任にしても売買と請負契約が混在しているし」
胡桃「これも不動産業界では普通のことじゃない。建売住宅は設問のような流れで、取引されるのが一般的でしょ。というわけで1から見ていくわよ」
宅建士試験過去問 権利関係 請負 2-16 平成18年
AがBに対して建物の建築工事を代金3000万円で注文し、Bがこれを完成させた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1、請負契約の目的物たる建物に瑕疵がある場合、瑕疵の修補が可能であれば、AはBに対して、損害賠償請求を行う前に、瑕疵の修補を請求しなければならない。
2、請負契約の目的物たる建物に重大な瑕疵があるために、これを建て替えざるを得ない場合には、Aは当該建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
3、請負契約の目的物たる建物に瑕疵があり、瑕疵の修補に要する費用が契約代金を超える場合には、Aは原則として請負契約を解除することができる。
4、請負契約の目的物たる建物の瑕疵について、Bが瑕疵担保責任を負わない旨の特約をした場合には、Aは、当該建物の瑕疵について、Bの責任を一切追及することができなくなる。
胡桃「請負契約の瑕疵担保責任に関する問題だということは分かるわね」
建太郎「ああ。だけど、やたらと難しくないか。テキストで見たことのない話ばかりじゃん。判例なのか?」
胡桃「そうよ。比較的新しい判例もあるわ。でも、基本を押さえていれば、正答を見つけることは難しくないよ」
宅建士試験過去問 権利関係 賃貸借 2-15 平成27年
AB間でAを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物について、(1)賃貸借契約を締結した場合と、(2)使用貸借契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1、Bが死亡した場合、(1)では、契約は終了しないが、(2)では契約が終了する。
2、Bは、(1)では、甲建物のAの負担に属する必要費を支出した時は、Aに対して、その償還を請求できるが、(2)では、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。
3、AB間の契約は、(1)では諾成契約であり、(2)では要物契約である。
4、AはBに対して、甲建物の瑕疵について、(1)では担保責任を負う場合があるが、(2)では担保責任を負わない。
胡桃「これは簡単だわね」
建太郎「賃貸借契約と使用貸借契約の違いを問う問題だよな」
胡桃「条文を読んでいれば簡単に解ける問題だわ。まずは、賃貸借契約と使用貸借契約を再確認するわよ」
相続人の廃除 / 行政書士だけでは食えない今の時代を生き抜くためのヒントは孫子の兵法にあり
遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
これが民法第八百九十二条に定められている相続人の廃除と言われる制度です。
条文にある通り、被相続人に対して、虐待、重大な侮辱を加えた者。あるいは、相続人に著しい非行があったときは、罰として相続財産を受け継げなくさせるという制度です。
相続人の廃除を行う方法は、二通りあります。
一つは、被相続人――あなたが生きている間に、家庭裁判所に請求して、相続人の廃除の手続きを行っておくこと。
もう一つは、遺言書に、特定の相続人を廃除するように書き残すことです。
相続人の廃除を行うならば、遺言書に書き残すよりも、生前に家庭裁判所に請求しておく方が確実です。
遺言書の場合ですと、公正証書遺言ならともかく、それ以外の形の遺言書だと、捨てられてしまえばそれまでですから。
相続人の廃除が行われると、廃除された者は、相続人となることができません。
但し、注意したいことは、廃除された相続人の子供が代襲して相続人になるということです。
だから、坊主が憎けりゃ袈裟まで憎いということわざの如く、己に対して虐待した次男のみならず、次男の家族には、絶対に遺産を相続させたくない。と考えて、次男を廃除しても、次男の子――孫がいれば、孫が遺産を相続してしまうことになるということです。
この点はどうすることもできません。
相続人の廃除ができるのは、「遺留分を有する推定相続人」だけです。
具体的には、配偶者、子や孫、親だけです。遺留分のない兄弟姉妹は含まれていません。
子や孫、親がいない場合は、兄弟姉妹が相続人になることができますが、彼らは、廃除することはできません。
なぜなら、兄弟姉妹に遺産を相続させたくなければ、遺言書にその旨を書くだけでよいので、相続人の廃除という制度の対象となっていないのです。
※参考条文 民法
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(推定相続人の廃除の取消し)
第八百九十四条 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。
(推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理)
第八百九十五条 推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。
2 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
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宅建士試験過去問 権利関係 賃貸借 2-14 平成28年
AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1、Aは、Bの賃料の不払いを理由に甲建物の賃貸借契約を解除するには、Cに対して、賃料支払いの催告をして甲建物の賃料を支払う機会を与えなければならない。
2、BがAに対して甲建物賃料を支払い期日になっても支払わない場合、AはCに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができる。
3、AがBの債務不履行を理由に甲建物の賃貸借契約を解除した場合、CのBに対する賃料の不払いがなくても、AはCに対して、甲建物の明渡しを求めることができる。
4、AがBとの間で甲建物の賃貸借契約を合意解除した場合、AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には、甲建物の明渡しを求めることはできない。
建太郎「むむっ……。これは難しいな。判例の知識を問う問題だよな?」
胡桃「そうよ。それでも問われている判例は基本的なものばかりだから、知っていれば簡単に解けるわ」
建太郎「結局、重要な判例は全部、暗記しなきゃいけないんだな」
胡桃「もちろん、宅建レベルならば、判例を丸暗記すれば、合格できるわ。でも、時々、新しい判例も出てくるから、暗記することと同じくらい理解することも大切よ」
遺言者の代わりに相続手続きを見届ける人 遺言執行者 / 行政書士だけでは食えない今の時代を生き抜くためのヒントは孫子の兵法にあり
遺言書が効力を発揮するのは、遺言者が亡くなってからです。ですから、遺言者は、自分の遺言通りに事が進むかどうかを見届けることはできません。
もしかしたら、相続人の一人が、遺言内容に異議を唱えて、相続人間で争いごとになるのではないかと考えてしまうと、おちおち死んでもいられないものです。
遺言書を作成する時は、この遺言書を読んだ相続人がどう思うか。不満を持つ者がいないかということを考慮して作らなければなりません。
各相続人の最低限の取り分――遺留分を侵害しないように遺産の配分を考える。
特別受益を受けた者がいる場合はその分を差し引いて遺産の分配を考える。
寄与分がある者に対して考慮した遺産の配分を考える。
遺産の分割だけでも、細心の注意を支払う必要があります。苦心の末、作成したならば、さあ、一安心というわけにはいかないものです。
やはり、どんなに頭をひねって作った遺言書でも、その遺言通りに相続人が納得するとは限らないのです。
そんな時は、遺言書通りに手続きが行われるかどうか監督する人を選任しておくことができます。
これを「遺言執行者」といいます。
遺言者の死亡後に、遺言の内容を実現するために必要な行為や手続きをしてくれる人のことです。
遺言執行者は誰でもなることができます。
親戚の中で信頼できる若い人がいれば、その人に頼むのもよいでしょう。
しかし、相続人の一人を遺言執行者とすることはお勧めできません。相続の当事者ですから、自分の都合のよいように、手続きを進めてしまうということも考えられるからです。
相続手続きは法的な手続きを伴うのが一般的です。
不動産であれば、所有権移転登記手続きを行わなければなりませんし、遺言による認知の場合は、役所で手続きをしなければなりません。
そのため、法律に精通している人であることが望ましいです。
さらに、相続人とも、全く、利害関係がない人であることが望ましいです。
親戚の場合は、相続人にはならなくても、やはり、情がわいてくるものでしょう。特定の相続人と結託して、勝手に相続手続きを進めてしまうことも考えられます。
相続人とは無関係の法律家に依頼しておけば、遺言書に従って忠実に手続きを進めてくれるものです。
※参考条文 民法
第四節 遺言の執行
(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
(過料)
第千五条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
(遺言執行者の指定)
第千六条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の任務の開始)
第千七条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
(遺言執行者に対する就職の催告)
第千八条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。
(遺言執行者の欠格事由)
第千九条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
(遺言執行者の選任)
第千十条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
(相続財産の目録の作成)
第千十一条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。
(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
(特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
(遺言執行者の地位)
第千十五条 遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
(遺言執行者の復任権)
第千十六条 遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 遺言執行者が前項ただし書の規定により第三者にその任務を行わせる場合には、相続人に対して、第百五条に規定する責任を負う。
(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
第千十七条 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
(遺言執行者の報酬)
第千十八条 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2 第六百四十八条第二項及び第三項の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。
(遺言執行者の解任及び辞任)
第千十九条 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
(委任の規定の準用)
第千二十条 第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、遺言執行者の任務が終了した場合について準用する。
(遺言の執行に関する費用の負担)
第千二十一条 遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。ただし、これによって遺留分を減ずることができない。
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次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1、倒壊しそうなA所有の建物や工作物について、Aが倒壊防止の措置をとらないため、Aの隣に住むBがAのために最小限度の緊急処置をとったとしても、Aの承諾がなければ、Bはその費用をAに請求することができない。
2、建物所有を目的とする借地人は、特段の事情がない限り、建物建築時に、土地に石垣や擁壁の設置、盛土や杭打ち等の変形加工をするには、必ず、賃貸人の承諾を得なければならない。
3、建物の賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合、賃借人は目的物の使用収益に関係なく、賃料全額の支払いを拒絶できる。
4、建物の賃貸人が賃貸物の保存に必要な修繕をする場合、賃借人は、修繕工事のため、使用収益に支障が生じても、これを拒むことができない。
建太郎「むむっ……。これは、簡単そうな問題に見えて、難しくないか?」
胡桃「そうね。宅建試験ではあまり問われない分野の法律知識も問う問題だわ。それでも、正解を見つけることは難しくはないはずよ。まず、1から見ていくわよ」