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宅建士試験過去問 権利関係 連帯債務・保証 1-34 平成16年

AとBが1000万円の連帯債務をCに対して負っている(負担部分は半分ずつ)場合と、Dが主たる債務者としてEに1000万円の債務を負い、FはDから委託を受けてその債務の連帯保証人となっている場合の次の記述のうち、民法の規定によれば正しいものはどれか。

1、1000万円の返済期限が到来した場合、Cは、AまたはBにそれぞれ500万円までしか請求できないが、EはDにもFにも、1000万円を請求することができる。
2、CがBに対して、債務の全額を免除しても、AはCに対してなお500万円の債務を負担しているが、EがFに対して、連帯債務の全額を免除すれば、Dも債務の全額を免れる。
3、Aが1000万円を弁済した場合には、Aは、500万円についてのみ、Bに対して求償することができ、Fが1000万円を弁済した場合にも、Fは500万円についてのみDに対して求償できる。
4、Aが債務を承認して時効が中断してもBの連帯債務の時効の進行には影響しないが、Dが債務を承認して、時効が中断した場合には、Fの連帯保証債務に対しても、時効中断の効力が生じる。


建太郎「むむっ。ややこしい問題だな。AからFまで六人の人物が出てくるのか。混乱するよ」
胡桃「そうよ。こういう風に、登場人物をわざと多くして、混乱させようとする意図が透けて見えるわね。でも、問うている内容は基本的なことだから、ミスしないようにしたいわね」
建太郎「それにしても、面倒な問題だ」



胡桃「まず、1から見ていくわよ」
建太郎「連帯債務と連帯保証とでは、債権者はそれぞれの債務者や保証人に全額請求できるのか。それとも負担部分だけ請求できるかという問題だよな」
胡桃「どう考えるべきかしら?」
建太郎「連帯している時点で、債務だろうが保証だろうが同じだろ。債権者は全員に対して全額請求できる。連帯債務の場合は次の通り」

(履行の請求)
第四百三十二条  数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

建太郎「連帯債務者は、それぞれが主たる債務者なんだから、債務の全額の弁済をしなければならないのは当然だよな。それから、連帯保証人には分別の利益がないとされている。つまり……」

(数人の保証人がある場合)
第四百五十六条  数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。

(分割債権及び分割債務)
第四百二十七条  数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

建太郎「この条文が適用されない」
胡桃「普通保証の場合は、分割債務になるというわけね。ただこの問題は連帯保証人は一人しかいないから、分別の利益の問題ではないわよ」
建太郎「えっ……?あっ、そうか。Dが主たる債務者、Fは連帯保証人なのか。保証人が一人なら、連帯とか分別の利益云々に関わりなく、1000万円請求されるのは当たり前だよな」
胡桃「この選択肢の後段は、連帯保証人が請求を受けた場合、まずは主たる債務者に請求できるかどうかを問う選択肢とみるべきね」
建太郎「連帯保証人には抗弁権がないという話か」

(催告の抗弁)
第四百五十二条  債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

(検索の抗弁)
第四百五十三条  債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

(連帯保証の場合の特則)
第四百五十四条  保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

胡桃「次、2はどうかしら?」
建太郎「連帯債務者の一人に対して免除した場合は、その連帯債務者の負担部分が消滅するという話だよな」

(連帯債務者の一人に対する免除)
第四百三十七条  連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。

胡桃「じゃあ、連帯保証人に対する免除はどうかしら?」
建太郎「連帯保証人が免除されるって要するに保証人にならなくてもいいとよという意味でしかないだろ。主たる債務者が免除されるわけじゃないから、依然として債務の額は変わらないだろう」
胡桃「そう考えればいいわけだけど、要するに、連帯債務者には負担部分がある一方で、連帯保証人には負担部分がないということよ。民法にはこうあるわ」

(連帯保証人について生じた事由の効力)
第四百五十八条  第四百三十四条から第四百四十条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。

胡桃「第四百三十七条の規定も準用されるんだけど、負担部分のない連帯保証人が免除されたって、主たる債務者の債務の額に影響はないということよ」
建太郎「なるほど、そういうことか」
胡桃「次、3はどうかしら?」
建太郎「連帯債務者の一人が弁済した場合は、負担部分に応じて、他の債務者に求償できる。当たり前だよな」

(連帯債務者間の求償権)
第四百四十二条  連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
2  前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。

建太郎「それに対して、連帯保証人が全額弁済したら、主たる債務者に対して、全額を求償できるのは当たり前だよな。連帯云々以前に、保証人なんだから」
胡桃「そうね。保証人の求償権は、いくつかのパターンがあったけど覚えているかしら」
建太郎「あっ。主たる債務者の委託を受けたか受けないか、主たる債務者の意志に反するかどうかで求償権の範囲が違ってくるんだよな」

(委託を受けた保証人の求償権)
第四百五十九条  保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。
2  第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

※(連帯債務者間の求償権)
第四百四十二条  連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
2  前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。

(委託を受けない保証人の求償権)
第四百六十二条  主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務者にその債務を免れさせたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において償還をしなければならない。
2  主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

建太郎「問題文によれば、FはDから委託を受けて保証人になったとあるから、求償権の範囲は『弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。』と」
胡桃「そうね。次、4はどうかしら」
建太郎「時効の中断の問題だよね。時効の中断事由としては、三つあった」

(時効の中断事由)
第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一  請求
二  差押え、仮差押え又は仮処分
三  承認

建太郎「履行の請求を受けることによって、時効が中断する場合は、すべての債務者に対しても効力が生じる。連帯保証の場合も同じだね」

(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
第四百三十四条  連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。

(連帯保証人について生じた事由の効力)
第四百五十八条  第四百三十四条から第四百四十条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。

胡桃「そうよ。ただ設問では、『債務を承認して時効が中断』とあるわね」
建太郎「債務の承認も時効の中断事由だけど、連帯債務者の一人が債務を承認しても、その効力は他の連帯債務者には及ばない」

(相対的効力の原則)
第四百四十条  第四百三十四条から前条までに規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。

胡桃「選択肢4の前段は正しいということになるわね。じゃあ、後段はどうかしら?」
建太郎「これは連帯債務者同士の相対的効力の問題ではなくて、主たる債務者と保証人の関係の問題だよね。つまり、『主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。』ということ」

(主たる債務者について生じた事由の効力)
第四百五十七条  主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
2  保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。

胡桃「そうね。というわけで、答えはどれかしら?」
建太郎「4だね」



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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3