初めての宅建士資格試験重要過去問

解けなかったら合格できない重要過去問をピックアップしていきます

宅建士試験過去問 権利関係 相続 1-50 平成15年

Aが死亡し、それぞれ三分の一の相続分を持つAの子B、C、D(他に相続人はいない)が全員、単純承認し、これを共同相続した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。

1、相続財産である土地につき、遺産分割協議前に、BがCとDの同意なくB名義に所有権移転登記をし、これを第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、CとDは、自己の持分を登記なくして、その第三者に対抗できる。
2、相続財産である土地につき、BCDが持分各三分の一の共有相続登記をした後で、遺産分割協議により、Bが単独所有権を取得した場合、その後で、Cが登記上の持分三分の一を第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、Bは、単独所有を登記なくして、その第三者に対抗することができる。
3、相続財産である預金返還請求権などの金銭債権は、遺産分割協議が成立するまでは、相続人三人の共有に属し、三人全員の同意がなければ、その債務者に弁済請求できない。
4、Bが相続開始時に、金銭を相続財産として保管している場合、CとDは、遺産分割協議成立前でも、自己の相続分に相当する金銭を支払うように請求できる。



建太郎「むむっ……。宅建の相続の問題って条文レベルだったんじゃないのか?難しいだろこれは」
胡桃「そうかしら?基本的な判例の知識を問う問題よ。確実に得点したい問題だわ」
建太郎「この問題が基本なのかよ……」
胡桃「まず、1から見ていくわよ」


建太郎「これは、さすがに分かるよ。共同相続の場合、相続人の一人が単独で所有権移転登記をして、すべて自分のものだと主張して、第三者に所有権移転登記をしても、他の相続人は、自己の持分について、登記がなくても対抗できるんだよな。選択肢1の場合、CとDは、Bに対して対抗できることはもちろんだけど、Bから譲り受けた、第三者に対しても対抗できると」
胡桃「そうね。基本的な判例だから、確実に正誤が判断できるようにしたいわね。ところで、CとDが登記なくして、第三者にさえ対抗できてしまうのはどうしてかしら?」
建太郎「まず、Bが単独所有とした登記は、B自身の持分以外については、無権利者の登記であるということ。それから、登記には公信力がないとされていることによるね」
胡桃「公信力って何かしら?」
建太郎「真実の権利関係と登記の記載とが異なっているとき、登記の記載を信用した者が保護されるかどうかということ。登記には公信力がないから、不動産登記簿の記載を信用したとしても、保護されないんだよな」
胡桃「そうね。ちなみに公信力は、どういう場合に認められるのかしら?」
建太郎「日本の民法では、動産の占有に公信力を認めているんだよね。だから占有者から、取引行為によって動産を取得すれば、即時取得できる」

即時取得
第百九十二条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

胡桃「そうね。だから、Bが譲渡したのが土地ではなくて、ダイヤモンド等の動産だったら、CとDは第三者に対して対抗できないのは分かるわね?」
建太郎「OK」
胡桃「じゃあ。次、2はどうかしら?」
建太郎「遺産分割協議協議後に、第三者に譲渡した場合は、原則通り、民法第百七十七条の対抗問題になるんじゃないのかな?」

(不動産に関する物権の変動の対抗要件
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

建太郎「だから、選択肢2の場合は、Bは、登記しなければ、第三者に対抗できない」
胡桃「そうね。遺産分割により法定相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、遺産分割後に権利を取得した第三者に対抗することができない。とされているわ。一応、判例だから押さえておいてね。次、3はどうかしら?」
建太郎「債権は、分割されるのが原則だよな」

(分割債権及び分割債務)
第四百二十七条  数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

建太郎「だから、法定相続が為された場合、それぞれの共同相続人は、自分の持分について債権を行使することができるから、債務者に対する弁済請求も、自分の持分については自由にできる」
胡桃「そうね。金銭債権は可分債権だから、法律上当然に分割されて、各共同相続人は相続分に応じて、権利を承継する。だから、遺産分割前でも、自己の相続分について、弁済請求することができるとされているわ。これも判例だから、押さえておいてね。次、4はどうかしら?」
建太郎「これがよく分からないんだよな。どういうことなんだ?」
胡桃「これは覚えるしかないわね。遺産分割までは、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している相続人に対して、他の相続人が自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできないというのが判例なのよ」
建太郎「うん?よく分からないなあ……。金銭債権は当然に分割されるんだろ?」
胡桃「問題文には、金銭とあるでしょ。金銭債権じゃなくて、動産として保管しているようなものなのよ。例えば、これが、金銭じゃなくて、ダイヤモンドだったらどう考えるべきかしら?」
建太郎「そりゃ、遺産分割協議が終わるまでは、保管者の手元にとどめておくべきだろう。相続人が勝手にこっちに寄越せと請求できるとしたら、早い者勝ちということになってしまう」
胡桃「そうよね。タンス預金のように金銭にすぎない場合も同様に考えるのよ」
建太郎「うーん……。それなら理解できるような気もするけど」
胡桃「とりあえず、この点について詳しく突っ込もうとしたら、司法試験レベルの勉強になってしまうわ。宅建試験では、金銭債権は可分債権だから、各共同相続人が自己の持分に応じて弁済請求できる。一方、金銭自体を保管している人に対しては、自己の持分に応じて弁済請求できないと覚えてしまうしかないわ」
建太郎「それで覚えればいいんだね」
胡桃「そうよ。尤も、この問題の場合、3と4の違いが分からなくても、他の選択肢が基本的な判例の知識を問う問題だから、正答を見つけることは容易いはずよ。基本を押さえていれば、難しい選択肢が出ても慌てる必要はないのよ。というわけで答えは?」
建太郎「1だね」



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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限1