初めての宅建士資格試験重要過去問

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宅建士試験過去問 権利関係 契約の解除 1-25 平成16年

AはBに甲建物を売却し、AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか。

1、BがBの債権者Cとの間で甲建物につき、抵当権設定契約を締結し、その設定登記をした後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aはその抵当権の消滅をCに主張できない。
2、Bが甲建物をDに賃貸し、引き渡しも終えた後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aはこの賃借権の消滅をDに主張できる。
3、BがBの債権者Eとの間で甲建物につき、抵当権設定契約を締結したが、その設定登記をする前にAがAB間の売買契約を適法に解除し、その旨をEに通知した場合、BE間の抵当権設定契約は無効となり、Eの抵当権は消滅する。
4、AがAB間の売買契約を適法に解除したが、AからBに対する甲建物の所有権移転登記を抹消する前に、Bが甲建物をFに賃貸し引渡しも終わった場合、Aは、適法な解除後に、設定されたこの賃借権の消滅をFに主張できる。

建太郎「なんだこの問題は?難しくないか?」
胡桃「確かにレベルが高めの問題ね。契約解除と第三者の関係を問う問題だけど、単純に第三者に転売していましたという問題ではなくて、抵当権を設定したとか、賃貸借契約を結んだという話だから、混乱するかもしれないわね」
建太郎「混乱どころじゃねえ」
胡桃「でも、抵当権とか賃借権が出てきたとしても、難しく考える必要はないのよ。結局、解除前の第三者と解除後の第三者との関係を問う問題にすぎないわ」


胡桃「まず、契約解除が為されるとどうなるか分かるかしら?」
建太郎「契約は遡って消滅するから、原状回復義務が生じるんだよね。売主は代金を払い戻し、買主は物件を返還しなければならない」

(解除の効果)
第五百四十五条  当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2  前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3  解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

胡桃「そうね。でも、その前に、第三者がその物件について、所有権を取得していたらどうなるかしら?」
建太郎「『ただし、第三者の権利を害することはできない。』とあるように、権利を害することはできない」
胡桃「この第三者というのは、所有権を主張するために何らかの行為をしなければならなかったよね?」
建太郎「あっ。所有権を取得したことを主張するためには、権利保護要件としての登記を備えていなければならないというのが判例だったね」
胡桃「じゃあ、契約解除の後に、買主が第三者との間で売買契約を結んだ場合はどうなるかしら?」
建太郎「二重売買と同様の関係になるから、対抗要件としての登記を備えなければならない」

(不動産に関する物権の変動の対抗要件
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

胡桃「そうよ。この問題は、そのことを問う問題なのよ。所有権ではなくて、抵当権や賃借権だったら、どうなるかということね。そのことを踏まえたうえで、1から見ていくわよ」
建太郎「ええっと……。これは、契約解除前の第三者との関係だよね。抵当権の場合もやはり、所有権と同じで、権利保護要件としての登記を備えている必要があるんじゃないかな?」
胡桃「そうよ。1の設問では、Cは抵当権設定登記を受けているから、Aは抵当権の消滅を主張できないわね。2はどうかしら?」
建太郎「契約解除前の第三者との関係だね。ただ、賃借権……。賃借権も登記できるんだよな。やっぱり、権利保護要件としての登記を備えていなければならないから、登記をしていないなら、保護されないってことか?」
胡桃「違うわ。確かに、賃借権も登記することができるけど、一般的には、登記をしないでしょ」
建太郎「確かに、胡桃の事務所で賃借権設定登記の仕事なんてしたことないよな」
胡桃「賃借権の対抗力については、借地借家法という特別法に定めがあるのよ」

借地借家法
(建物賃貸借の対抗力等)
第三十一条  建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
2  民法第五百六十六条第一項 及び第三項 の規定は、前項の規定により効力を有する賃貸借の目的である建物が売買の目的物である場合に準用する。
3  民法第五百三十三条 の規定は、前項の場合に準用する。

民法
(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

(同時履行の抗弁)
第五百三十三条  双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

胡桃「『建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。』ということね。借地借家法宅建試験では、細かく問われるから、後でしっかり勉強するわよ」
建太郎「ということは、登記無くても、契約解除前の第三者である賃借人Dは保護されるということだね」
胡桃「そうよ。次、3はどうかしら?」
建太郎「これも契約解除前の第三者との関係だね。BE間の抵当権設定の登記がまだ為されていないということは、権利保護要件としての登記を備えていない。AはEに対して対抗できるわけだよな。で、BE間の抵当権設定契約は……、特に影響はないってことでいいんじゃないかな?」
胡桃「そうね。この問題は、契約解除前の第三者がした契約が無効になるかどうかを問いたいわけね。この場合は、Eは、抵当権設定登記をしない限り、Aに対抗できないだけで、BE間の抵当権設定契約が無効になるというわけではないのよ。後は、BとEの間で処理してくださいねというだけの話よ」
建太郎「そりゃそうだよな」
胡桃「最後、4はどうかしら?」
建太郎「これは、契約解除の後の第三者との関係だよな。AはAB間の売買契約を適法に解除したのはいいけど、まだ所有権移転登記を抹消していない。ということはまだ、対抗要件としての登記を備えていないということだよな。その間に、賃借人Fが現れた。選択肢2で見た通り、建物賃貸借の対抗力は引き渡しで足りるとあるから、賃借人Fは対抗要件を備えていることになる。だから、賃借人Fの権利が優先するということだよな」
胡桃「そうよ。理解できているようね。というわけで答えはどれかしら?」
建太郎「1だね」


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