初めての宅建士資格試験重要過去問

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宅建士試験過去問 権利関係 借地権 1-61 平成15年

AがBに、A所有の甲地を建物の所有を目的として賃貸し、Bがその土地上に乙建物を新築し、所有している場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1、Bが乙建物につき、自己名義の所有権の保存の登記をしている場合は、甲地につき、賃借権の登記をしていない時でも、甲地をAから譲渡され、所有権移転登記を受けたCに対して、甲地の賃借権を対抗できる。
2、乙建物が滅失した場合でも、Bが借地借家法に規定する事項を甲地の上の見やすい場所に掲示した時は、Bは、甲地に賃借権の登記をしていなくても、滅失のあった日から2年間は、甲地をAから譲渡され、所有権移転登記を受けたDに対し、甲地の賃借権を対抗できる。
3、Bが乙建物をEに譲渡しようとする場合において、Eが甲地の賃借権を取得しても、Aに不利になるおそれがないにもかかわらず、Aがその賃借権の譲渡を承諾しない時は、Bは、裁判所にAの承諾に代わる許可をするように申し立てることができる。
4、Bが、乙建物を一年以上、自己所有しておらず、かつ、他人に譲渡しようとすることもない場合、Aは、裁判所に相当の対価の提供を条件として、自ら乙建物の譲渡及び甲地の賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てることができる。



胡桃「いよいよ、権利関係のもう一つの重要法令、借地借家法の問題よ」
建太郎「民法と違って、条文を丸暗記すれば解けるから、楽だよな」
胡桃「そうね。ただ、単に丸暗記するだけでなく、理解することも大切よ。まず、1から見ていくわよ」



建太郎「本来、登記がなければ、不動産の賃借権を第三者に対抗することができない。ただ、不動産の賃借権の登記は、賃貸人に登記強力義務がないから、賃借人から無理強いすることはできない。そこで、借地借家法では、土地の賃借人を保護する規定を置いているんだよな」

(借地権の対抗力等)
第十条  借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2  前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
3  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条第一項 及び第三項 の規定は、前二項の規定により第三者に対抗することができる借地権の目的である土地が売買の目的物である場合に準用する。
4  民法第五百三十三条 の規定は、前項の場合に準用する。

※(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

※(同時履行の抗弁)
第五百三十三条  双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

胡桃「そうね。借地借家法の趣旨は、弱い権利しかない賃借人に、地上権並みの権利を認めようということよね。いわゆる、賃借権の物権化よ。この規定もその一つね。次、2はどうかしら?」
建太郎「借地権は、建物が滅失したとしても、直ちには消滅しないんだよな。一定の方法で、掲示すれば、建物を再築するまで借地権が存続する」
胡桃「第十条の2項に書かれているとおりね。尤も、この規定を利用するには、滅失した借地上の建物について登記していたことが前提になるわ」
建太郎「登記していない建物を滅失した場合は、2項の規定に従って掲示しても意味ないというわけだね」
胡桃「そうよ。次、3はどうかしら?」
建太郎「賃借権の譲渡や転貸をするには、賃貸人の承諾が必要になる。この点は、借地借家法でも修正されていなくて、民法の原則通りなんだよな」

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条  賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

建太郎「ただ、借地借家法では、賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可という制度を設けている」

(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第十九条  借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
2  裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3  第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
4  前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。
5  第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。
6  裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
7  前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

胡桃「そうね。これも、賃借権の物権化の一種と言えるわね。よく出てくる条文だから、しっかり読み込んで置くのよ。4はどうかしら?」
建太郎「これは何を問いたいのか、よく分からない出題だな。しいていえば、第十九条3項の規定について、問いたいのか?」
胡桃「おそらくそうだと思うわ。借地権設定者が、建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをするのは、借地権者が第三者への土地の賃借権の譲渡又は転貸を裁判所に申し立てた時だということを押さえておいてね。借地権者が自己使用していない場合に、借地権設定者が何らかの申し立てをするという趣旨の制度はないわ」
建太郎「まったくの創作の規定だというわけだね?」
胡桃「そうよ。借地借家法の主な条文に、一通り、目を通しておけば、こんな条文がないことは一目で分かるわ。だからこそ、宅建試験では、条文をチェックすることが大切なのよ。というわけで答えはどれかしら?」
建太郎「4だね」



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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限2