初めての宅建士資格試験重要過去問

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宅建士試験過去問 権利関係 借家権 2-51 平成21年 / 宅建はライトノベル小説で勉強しよう

A所有の甲建物につき、Bが一時使用目的ではなく、賃料月額10万円で賃貸借契約を締結する場合と、Cが適当な家屋に移るまでの一時的な居住を目的として、無償で使用貸借契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1、BがAに無断で甲建物を転貸しても、Aに対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある時は、Aは賃貸借契約を解除できないのに対し、CがAに無断で甲建物を転貸した場合は、Aは使用貸借契約を解除できる。
2、期間の定めがない場合、AはBに対して、正当な事由がある時に限り、解約を申し入れることができるのに対し、返還期限の定めがない場合は、AはCに対していつでも返還を請求できる。
3、Aが甲建物をDに売却した場合、甲建物の引き渡しを受けて、甲建物で居住しているBは、Dに対して、賃借権を主張することができるのに対し、Cは甲建物の引き渡しを受けて、甲建物に居住していても、Dに対して使用貸借を主張することかできない。
4、Bが死亡しても賃貸借契約は、終了せず、賃借権はBの相続人に相続されるのに対し、Cが死亡すると、使用貸借契約は終了するので、使用借権はCの相続人に相続されない。



胡桃「これは、借地借家法の規定と民法の規定を横断的に問う内容だわね」
建太郎「うん。そうだな。しかし……、どの選択肢も正しいように見えるんだけど?」
胡桃「条文をしっかり読み込んでいないと解けないわ。パッと見て正誤を判断できないとすれば勉強不足よ。もう一度、テキストを読み直しなさいよね」



胡桃「まず、借地借家法は、どんな権利に適用されるんだっけ?」
建太郎「条文の趣旨だな」

借地借家法
(趣旨)
第一条  この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。

建太郎「借地借家法が適用されるのは、次の二つだな。
 1、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権
 2、建物の賃貸借」
胡桃「そうね。建物の使用貸借は借地借家法が適用されないことは分かるわね?」
建太郎「うん。民法の規定が適用されるんだよな」
胡桃「それから、一時使用目的の場合はどうだったかしら?」
建太郎「一時使用目的の場合は借地借家法の規定は適用されないんだよな」

(一時使用目的の借地権)
第二十五条  第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。

(一時使用目的の建物の賃貸借)
第四十条  この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。

胡桃「そうね。そのことを踏まえたうえで、1から見ていくわよ」
建太郎「まず、建物の転貸に関しては、借地借家法に規定がないから、民法の原則通りになるんだよな」

民法
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条  賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

建太郎「賃借権の譲渡及び転貸には原則として、賃貸人の承諾が必要とされているけど、背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある時はOKとされていて、賃貸人が契約の解除をすることもできないとされているんだよな」
胡桃「そうよ。判例だから、しっかり押さえておいてね。それに対して、使用貸借はどうかしら?」

民法
(借主による使用及び収益)
第五百九十四条  借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2  借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3  借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。

建太郎「同じように、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。とされているし、この規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。とされているな」
胡桃「背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある時は……。という趣旨の判例はないのかしら?」
建太郎「ないね。だから、条文通りに、貸主は、契約の解除をすることができるんだな」
胡桃「その通りよ。ちなみに、借地権の場合は、借地借家法に特別な規定が置かれていたわね?」
建太郎「土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可の制度だったな」

借地借家法
(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第十九条  借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
2  裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3  第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
4  前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。
5  第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。
6  裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
7  前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

胡桃「そうよ。合わせて押さえておいてね。2はどうかしら?」
建太郎「期間の定めがなくても、建物の賃貸借契約は、借地借家法の規定が適用されるんだよな。ということは、契約を解除するためには、正当な事由が必要になるんだよな」

借地借家法
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条  建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

胡桃「その通りよ。それに対して、使用貸借の場合はどうかしら?」
建太郎「いつでも返還請求できるんじゃなかったっけ?」
胡桃「民法の条文をよーく読んでよね」

(借用物の返還の時期)
第五百九十七条  借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2  当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
3  当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

建太郎「うん……?3項には、貸主は、いつでも返還を請求することができる。とあるけど……。あれ?2項は、『使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは』となっているな」
胡桃「そうよ。2項と3項は違うのよ。何が違うか分かるかしら?」
建太郎「あっ。当事者が定めなかった内容によって異なるのか!
2項は、当事者が返還の時期を定めなかったとき
3項は、当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったとき
となっているんだな」
胡桃「そうよ。問題文は、どっちかしら?」
建太郎「期間の定めがない場合とあるから、2項の返還の時期を定めなかった場合に当たるんだな」
胡桃「そうよ。というわけで、いつでも返還請求できるわけではなくて、『使用及び収益をするのに足りる期間を経過した』後でなければならないわけね。というわけで、間違いということよ」
建太郎「うーむ……。細かい選択肢だな」
胡桃「3はどうかしら?」
建太郎「第三者に対する対抗要件の問題だな。借地借家法では、建物の引き渡しさえあればよいことになっているんだよな」

(建物賃貸借の対抗力等)
第三十一条  建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
2  民法第五百六十六条第一項 及び第三項 の規定は、前項の規定により効力を有する賃貸借の目的である建物が売買の目的物である場合に準用する。
3  民法第五百三十三条 の規定は、前項の場合に準用する。

※(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

※(同時履行の抗弁)
第五百三十三条  双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

胡桃「そうね。当然、新たな大家さんになったDに対しても、借家権を主張できるのは分かるわね?」
建太郎「OK」
胡桃「それに対して、使用貸借の場合はどうかしら?」
建太郎「使用貸借は、貸主と借主の個人的な関係に基づいてなされるのが一般的なんだよな。ということは、貸主が他の人に譲渡してしまえば、対抗する術はない」
胡桃「そうね。民法上に定めがないわ。4はどうかしら?」
建太郎「借家権は相続の対象になるんだよな。借地借家法には特に定めはないけど、民法の原則によっても、賃借権は相続の対象になる。だから、賃借人Bが死亡すれば、その相続人が借主の地位を承継することになる」
胡桃「使用貸借の場合はどうかしら?」
建太郎「民法に定めがあったんだよな」

(借主の死亡による使用貸借の終了)
第五百九十九条  使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。

建太郎「当然、借主の相続人が、使用貸借の権利を承継することはない」
「そのとおりよ。ちなみに、借地借家法には、相続に関して、次の規定があることもチェックしておいてね」

(居住用建物の賃貸借の承継)
第三十六条  居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2  前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。


建太郎「相続人がいない場合、内縁の妻が建物の賃借権を承継できるという制度だな」
胡桃「そうよ。合わせて押さえておいてね。というわけで答えは?」
建太郎「2なんだな」



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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 宅建業法1

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