初めての宅建士資格試験重要過去問

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宅建士試験過去問 権利関係 質権 1-39 平成14年

Aは、Bから、建物を賃借し、Bに3000万円の敷金を預託した。その後、Aは、Bの承諾を得て、この敷金返還請求権につき、Cからの借入金債務を担保するために、Cのために適法に質権を設定した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち、正しいものはどれか。

1、Cは、Bの承諾が、書面によるものであれば、確定日付を得ていなくても、この質権設定をB以外の第三者に対しても対抗することができる。
2、CのAに対する利息請求権は、常に満期となった最後の二年分についてのみ、この質権の被担保債権となる。
3、CのAに対する債権の弁済期前にこの敷金返還請求権の弁済期が到来した場合は、CはBに対して当該敷金を供託するように請求できる。
4、CのAに対する債権の弁済期が到来した場合、CはBに対して、Bがこの質権設定を承諾したことを根拠に、この敷金返還請求権の弁済期の前に当該敷金を直ちにCに交付するように請求できる。


建太郎「なんだこの問題……。難しくないか。質権と敷金について総合的に問う問題か?」
胡桃「そんなに難しくないわ。債権質の問題よ。質権って、何に対して設定することができるか覚えているかしら?」
建太郎「典型的なのは、動産だけども、不動産にも設定できるんだよな。それから、債権に対しても設定出来たんだっけ?」
胡桃「そうよ。宅建試験で質権のことが問われるとしたら、債権質が一番可能性が高いわ」
建太郎「えっ?不動産質権じゃなくて?」
胡桃「不動産質権は、一般的に利用されていないでしょう。あるとしたら、抵当権との違いを比較させる問題ね」



胡桃「債権に質権が設定されると、質権者は、債権に対して、どのような権利行使ができるか分かるかしら?」
建太郎「設定者に代わって、債務者に直接取り立てることができるんじゃなかった?」

(質権者による債権の取立て等)
第三百六十六条  質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
2  債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
3  前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
4  債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。

胡桃「そうね。すると、債権に質権を設定することって、債権譲渡をしたようなものだということになるわね」
建太郎「そうだよな」
胡桃「債権譲渡の対抗要件は、何だか覚えているかしら?」
建太郎「譲渡人から債務者への通知か、債務者の承諾じゃなかった?」
胡桃「そうよ。債権に質権を設定する場合もその条文が準用されているのよ」

(指名債権を目的とする質権の対抗要件
第三百六十四条  指名債権を質権の目的としたときは、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。

(指名債権の譲渡の対抗要件
第四百六十七条  指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2  前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

胡桃「それが分かれば、1は解けるわね。次、2はどうかしら?」
建太郎「あっ。これは分かるよ。抵当権と質権の大きな違いの一つが、被担保債権の範囲だよね。抵当権の場合は制限がある」

(抵当権の被担保債権の範囲)
第三百七十五条  抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
2  前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

建太郎「利息に関しては、最後の二年分についてのみという制限があるけど、質権には、その制限がない」

(質権の被担保債権の範囲)
第三百四十六条  質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

胡桃「そうね。どうしてか分かるかしら?」
建太郎「質権は、留置的効力がある。つまり、質権者が質物を独占することができるわけで、第二順位の質権者がいる事は想定しづらいから、優先弁済権の範囲が広く認められている。それに対して抵当権は、一番、二番というように複数の抵当権が設定されることも珍しくないから、他の抵当権者を害しないようにしなければならない。だから、利息が二年分に制限されている」
胡桃「正解よ。3はどうかしら?」
建太郎「あっ。これ、第三百六十六条の条文そのままの出題だったんだね。『前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。 』と」
胡桃「そうよ。この条文を知らなくても、他の選択肢が間違いだって分かれば、自ずと、正解が分かるわね。4はどうかしら?」
建太郎「これは、常識からしておかしいと分かるね。この選択肢の事例を認めたら、賃貸借が終わっていないのに、敷金の返還を求めることになってしまい、貸主を害することになる」
胡桃「そうね。敷金の返還を求めることができるのは、賃貸借が終了した後だということを知っていれば、これはおかしいと分かるわね。というわけで答えは?」
建太郎「3だね」


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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 法令上の制限1