初めての宅建士資格試験重要過去問

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宅建士試験過去問 権利関係 条件 1-11 平成11年

AとBはA所有の土地をBに売却する契約を締結し、その契約に「AがCからマンションを購入する契約を締結すること」を停止条件として付けた(仮登記の手続きは行っていない。)場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1、停止条件成否未定の間は、AB間の売買契約の効力は生じていない。
2、AB間の契約締結後に土地の時価が下落したため、停止条件の成就により不利益を受けることとなったBがAC間の契約の締結を故意に妨害した場合、Aは、当該停止条件が成就したものとみなすことができる。
3、停止条件の成否未定の間は、Aが当該所有土地をDに売却して所有権移転登記をしたとしても、Aは、Bに対して損害賠償義務を負うことはない。
4、停止条件の成否未定の間に、Bが死亡した場合、Bの相続人は、AB間の契約における買主としての地位を承継することができる。


建太郎「むむっ……。これはなんだ……。1を見た瞬間、拍子抜けするような問題だな。事例を設定しておきながら、そんなことを問うのかよって」
胡桃「確かにその通りね。でも、条件のことを正確に理解していなければ、1の正誤を判断できないかもしれないわね。まずは、1から見ていくわよ」


建太郎「停止条件を契約を締結しているんだから、契約の効力は生じていると考えるべきだろう。だって停止条件付きの契約って、期待権として保護されるんだろ」
胡桃「そう考えて、この選択肢が間違い。って考えてしまう人もいるかもしれないわね。でも、考えすぎよ。宅建試験レベルの問題では、条文を素直に読んで正誤を判断することが大切ね。停止条件の効果について定めた条文はどれか分かるかしら?」
建太郎「民法の……」

(条件が成就した場合の効果)
第百二十七条  停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2  解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3  当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

建太郎「なるほど……。条文そのままの出題だったのか」
胡桃「そうよ。こういう時に、条文を読んでいるか。テキストの解説を流し読みしているだけか。によって、正答率は違ってくるものなのよ。私が条文を読みなさいって、口を酸っぱくして言っているのは、そのためよ。
ここで問題を出すわ。もしも、『解除条件成否未定の間は、AB間の売買契約の効力は生じていない。』という選択肢だったら、どうなるかしら?」
建太郎「もちろん、誤りだね。解除条件の場合は、普通の契約同様に効力が生じていて、解除条件成就と共に、契約の効力が失われる」
胡桃「じゃあ次の問題。『停止条件が成就したら、契約締結時に遡って、AB間の売買契約の効力が生じる』これは正しいかしら?」
建太郎「間違いだね。1項には、『停止条件が成就した時からその効力を生ずる。』とはっきり書かれている。つまり、原則として、遡及効は生じないってことだ。ただし、3項にあるとおり、遡及効を生じさせる意思表示をすることは可能だけどね」
胡桃「正解よ。それだけ分かれば、宅建レベルの問題は解けるはずよ。次、2に行くわ」
建太郎「これは条文そのままの出題だね」

(条件の成就の妨害)
第百三十条  条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

建太郎「つまり、停止条件のついた契約は、まだ契約の効力が生じていないとはいえ、期待権として保護される。それを侵害することは許されないってことだ」
胡桃「そうよ。次、3はどうかしら?」
建太郎「とりあえず、次の条文を知っていれば、なんとなく正誤は判断できるよね」

(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
第百二十八条  条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

建太郎「ただ、損害賠償義務を負うんだろうなと何となく分かるだけで、正確に判断できない」
胡桃「あら。この問題は、条件だけの出題ではないのよ。債権法の知識をフル回転させないと正確に理解できないわね。こう考えるのよ。
まず、AがDに土地を売却してしまった場合、AはBに土地を引き渡すことができなくなってしまうわね。この場合、Aはどういう状態になるのかしら?」
建太郎「Bに土地を引き渡すという債務を履行できなくなる……。つまり、債務不履行か」
胡桃「債務不履行には三つの類型があったわね。覚えているかしら?」
建太郎「履行遅滞履行不能不完全履行だね」
胡桃「土地を引き渡せないのは、三つのうちどれかしら?」
建太郎「履行不能かな」
胡桃「そうよ。履行不能の場合は、債権者としてはどのような手段を取りうるんだっけ?」
建太郎「損害賠償請求か契約解除だよね。条文は次の通り」

債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

履行不能による解除権)
第五百四十三条  履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

胡桃「だから、3のケースでは、損害賠償請求義務を負うことになる……。と結論付けたいところだけど、これだけで、終わらせてはだめなのよ」
建太郎「まだ考えることがあるのか?」
胡桃「問題文の冒頭のカッコ書きを見てごらん。何て書いてあるかしら?」
建太郎「(仮登記の手続きは行っていない。)だよね」
胡桃「もしも、仮登記の手続きを行っていた場合は、逆の結論になってしまうのよ」
建太郎「えっ?そうなの……?」
胡桃「停止条件付売買契約において、仮登記は何のためにするか分かるかしら?」
建太郎「順位を保全するためだよね。つまり、甲区に所有権移転の仮登記を設定しておけば、売主が他の人に売買したとしても、仮登記の本登記をすることで、所有権を主張することができると」

不動産登記法
(仮登記に基づく本登記の順位)
第百六条  仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。

胡桃「そうよ。仮登記をしておけば、Bは、本登記をすることで優先的に所有権を取得できるわけだから、AがBに対して損害賠償義務を負うような事態には陥らないわけよ」
建太郎「なるほど……。そう考えるのか……。問題文にカッコ書きの中にしれっと重要なことが書かれているなんて、あざといなあ」
胡桃「カッコ書きがあったらむしろ、要注意だわ。次行くわよ。4は?」
建太郎「4は、何か問題あるのか?当たり前のことが書かれているだけのように思うけど?」
胡桃「当たり前のことでも、条文に照らして検討するわよ。どの条文が問題になるか分かるわね?」
建太郎「ええっと……。あっ、これだ」

(条件の成否未定の間における権利の処分等)
第百二十九条  条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

建太郎「条文そのままの出題なんだな」
胡桃「そうよ。相続人は、被相続人の一切の権利義務を承継するわけだから、当然、停止条件付売買契約の買主の地位も承継するわ。分かるわよね」

(相続の一般的効力)
第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

建太郎「ああ。分かるよ」
胡桃「というわけで正解はどれかしら?」
建太郎「3だね」

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→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係1

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係2

→ ライトノベル小説で学ぶ宅建士試験基本テキスト 権利関係3